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その他海外に関する話題「国別の思考パターン」

2017年4月18日

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┃ ■  ニュースレター No.66(上河様/SCD2国内分科会フェロー)
┃    (テーマ:その他海外に関する話題)
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SCD2にてフェローを仰せつかっているNECプラットフォームズの上河です。海外に関
する話題でおすすめの都市、レストラン、映画、土産の話題については皆さんがたくさ
んされているので、今回は少し硬い話ですが色々な国の人と接する時に参考になる
国別の思考パターンに関する話をしてみたいと思います。

CIGREは言うまでもなく1921年に12ヶ国の電力関連の技術者による会議が行なわ
れて以来、参加国が年々増え、現在は58ヶ国のNational Committeesと90ヶ国
以上からの参加メンバーを誇る国際活動です。したがって我々がSCD2の活動する場
合も欧州、北米、中南米、アジア等の色々な国の人と接する機会があり、それがCIG
REの一つの醍醐味でもあります。

海外の人とコミュニケーションを取る場合、英語のような共通言語の力を磨くことも
勿論重要ですが、色々な国の異文化に対する受容力を高めることも必要になります。
そして異文化を持つ色々な人々と付き合うためには、各国の人々が持っている文化的
な背景と、その背景から来る思考パターンを理解しておくことが重要です。今回は英
国の言語研究者で異文化間コミュニケーションの分野で著書を出しているリチャード・
D・ルイスの分析について、紹介したいと思います。ルイスは世界中の様々な文化のリ
ーダーシップの形態、コミュニケーションパターンを調査し、図式化したので有名で、
ルイスの作った研究所(Richard Lewis Communications)では多くのグローバル
企業(ドイツ銀行、BMW、ABB、IBM等)に異文化コミュニケーションのスキルを教え
ています。ルイスは日本に5年間滞在し、美智子皇后を始め皇室メンバーの個人教
授をつとめたこともあるので、日本に関する造詣も深い人物です。

ルイスは著書の中で、世界の文化を大きく3つの型に分類しています。

・線上行動型:計画し、スケジュールを系統立て、行動の関連性を追求する。
一定の時間には一つのことしかしない。代表的なのは、ドイツ人、スイス人。

・複合行動型:一時に多くのことをこなすが、優先順位は自分にとってわくわくする
こと、重要であることから付ける。時系列のスケジュール通りには動かない。いきい
きとした多弁な人たち。代表的なのは、イタリア人、ラテンアメリカ人、アラブ人。

・反応型:礼儀や敬意を優先する文化。相手の言うことに静かに穏やかに耳を傾け、
相手の提案にも注意深く反応する。代表的なのは、中国人、日本人、フィンランド人。

その結果、イタリア人はドイツ人のことを、堅苦しくて時間に支配されていると考え
ている。逆にドイツ人はイタリア人のことを支離滅裂で、話す時の身振りが大袈裟だ
と考えている。日本人はと言えばその様子をじっと見守りながら、両者から教訓を引
き出す。これが3者で面談した時のありがちなパターンになるそうです。

余談になりますが、実は私も以前ドイツ人とイタリア人と日本人という組み合わせで
飲み会を行ったことがあります。その時は確かにそれぞれの対応には上で書かれてい
る傾向があったかもしれませんが、色々な話をした結果、最後に三国で共通点がある
と同意したのは第二次世界大戦の敗戦国であるという点でした。その後、この共通点
があったので、スムーズに話が進みました。

ルイスの本では実際には世界中の国(53ヶ国に及ぶ)が細かく分析されていますが、
CIGREでの活動に役立てるという主旨でCIGREにも参加者の多い代表的な国の交渉パタ
ーンについていくつか紹介します。

米国人:最初に手の内を全て見せ、意見が一致しないと対決姿勢を取る。ところが、
必要になれば譲歩して解決を図ることもある。「時は金なり」が彼らの大原則で、多
くの場合すばやい決断を重んじるからだ。すぐに「要点に入りましょう」と言い、で
きるだけ早く交渉を終わらせようとする。米国人はまた、自分が相手よりも政治的、
経済的な実力を持っていると見るや、強引にその優位性を使って主張を通そうとする。
彼らのやり方は、しばしばぶしつけに見える。

フランス人:論理で相手を負かそうとする。交渉の始めから活発に討論し、言葉を武
器として使うのに長けている。終始礼儀正しい態度は崩さないが、相手が非論理的な
ことを少しでも言うと、すぐそこをかみつく。自分の論理が打ち破られない限り、譲
歩することはない。米国人とは対照的に、交渉が最終段階に入るまで自分の手の内を
見せようとせず、議論を長引かせようとする。

英国人:交渉の時も、概ね控えめで、マナーを守り、ユーモアを交えることで直接的
な対決を避けようとする。その姿勢は大きな成果を上げる時もあるが、まったく役に
立たない時もある。相手の提案に露骨に反対することはあまりなく、「それは面白い
アイデアですね」などと言いながら、拒絶のニュアンスをこめるような、曖昧な態度
を取ることも珍しくない。反対意見がなくても、英国人が一度目の会議で結論を出す
ことはめったにない。急ぐことを嫌うからである。

ドイツ人:論理的で、多くの論拠を集めて主張する傾向は、英国人やフランス人より
も強い。時間の使い方が一本の直線をたどるようで、一つの議論を終えてからでない
と次の議論に移らない。自分の主張を簡単には引っ込めないが、見解の一致点を見出
そうという努力はする。その時が相手にとって、交渉を進展させるチャンスになる。
ドイツ人は米国人や英国人と違って、会議の席でのジョークやユーモアを好まない。
冗談は口にしない方が良い。

スペイン人:交渉の始めから、相手との会話に時間をかける。感情を込めてロマンテ
ィックに雄弁に話すのだが、それは相手との間に友情や信頼を育んで、交渉を成功さ
せる下地にするためだ。彼らは非常に人間味に溢れる人たちなので、堅苦しい席で冷
静に付き合うのはほどほどにしておこう。夜、酒を飲みながら自分のことを率直に話、
打ち解ければ、交渉の様々な場面を経た後、良き友人として強い好意や信頼を寄せて
くれるようになる。

イタリア人:スペイン人と同じく雄弁で饒舌、様々な感情を込めて大声で話し、自在
に口調を変える。会議では、議論の流れにあまり従わず、すでに決まったはずの議論
に戻ったり、後に出てくる予定の話題について唐突に話し始めたりする。一方、柔軟
性も十分にあって、他のヨーロッパ人よりも自分への批判を受け入れる。その柔軟性
はまた、法律やルールを厳密に守らないという点に表れる。

中国人:概ね、日本人や他の一部のアジア人より率直。ただし会議の主な目的は情報
収集であり、本当の交渉や意思決定は水面下の他のところで行われることが多い。時
に対決姿勢を示したり、地位の高い者が権力を使って物事を進めようとしたりするが、
基本的に態度は丁寧だ。また、中国人の交渉のスピードは遅く、繰り返しが多いが、
絶対に彼らのメンツを潰すようなことはしてはならない。ちなみに香港人は、中国人
よりはるかに迅速に交渉して、結果を出す。

インド人:とにかく相手を誉め、批判しないので、礼儀正しさを感じさせることもあ
る。基本的に態度は柔軟だ。ただし、彼らが話す英語は冗長かつ非常に曖昧。また、
交渉の進展によっては、平気で「事実」や「状況」が変わったものとして話を進めて
くる。値段の駆け引きの巧妙さと粘り強さにかけては、おそらくインド人の右に出る
ものはいない。いったん取引が成立したかに思えても、またあれこれといろいろな理
屈を言って値段の変更を求めてくる。彼らと交渉するには、かなりの忍耐強さが必要
である。

韓国人:エネルギッシュな会話で早急に取引をまとめようとする。欧米式のユーモア
で相手を惹きつけたり、非常に真剣で熱心な姿勢になったりと、様々な顔を見せる。
時には事実を誇張したり、「真実かもしれないこと」を真実だと主張したりするケー
スもある。何も実行していないのに、すでにやったと言い張る人もいる。歴史的に不
安定な立場に置かれた時期が長かったせいか、長期的、独占的な契約を結びたがる。

日本人:協調的な雰囲気の中でビジネスを進めようとするので、調和を乱すようなこ
とをしてはいけない。率直すぎる態度は、往々にして歓迎されない。意思決定をする
ことを嫌い、次第に合意を積み重ねていくことで自ずから決定が形成されていくこと
を好む。スペイン人と良く似て、気に入ってもらい、信用されるようになることが重
要である。ドイツ人と同様に会議の席でのユーモアやジョークを好まない。

勿論これらはあくまで一般論であり、日本人の中にも関西人のようにラテン系の要素
を持った人間や、ドイツ人以上に論理的で堅苦しい人間もいるので一概にこのパター
ン分析が適用できるものでもありません。しかし、10ヶ国語を操り世界中を旅した
著者が、文化的な背景や色々なデータに基づいて調査、分析した結果なので今後CIGRE
の場等で色々な国の人と交渉したり、付き合う場面の参考にはなると思います。また
皆さんも自分や周りの人がどの国の人間に近いか、分析してみると面白いかもしれま
せん。

あとこの本の中で度々フィンランド人が登場し、ヨーロッパの中では日本人に近い思
考パターンを持っている(例えば沈黙を重んじるとか)人間として紹介されています。
私自身はフィンランド人と付き合ったことがないので本当かどうか分かりませんが、
数年間フィンランドに住んだことのある著者の分析なので多分正しいのだと思います。
一説では「青い目の日本人」と呼ばれるほどシャイで規則を守り礼儀正しいらしいで
すが、もしフィンランド人と付き合ったことがある人がいたら是非本当のところを教
えて下さい。尚、著者はフィンランド人を有名にした功績かはわかりませんが、19
97年にフィンランド政府より、ナイトの称号を贈られています。

参考文献:「文化が衝突するとき -異文化へのグローバルガイド-」 
(“When Cultures Collide: Leading across Cultures” (1999, 1996)の翻訳版)
   リチャード・D・ルイス2004 南雲堂





                                  以 上

(文責:NECプラットフォームズ株式会社 上河/CIGRE SCD2 事務局)